【高校化学】物質量(モル)計算は単位を操れば簡単に解ける!!

学校・勉強

さとぱん博士です。普段は博士研究員(ポスドク)として研究に明け暮れています。

今回は、化学の記述模試で全国100位台を取ったことがある私が、高校化学の最初の関門ともいえる物質量の計算を超簡単に解くコツを教えます。

この記事を読めば物質量計算が全く分からない人でも、ほぼ100%に近い正答率で物質量の計算を解けるようになります!

※物質量計算が苦手な人向けに基礎中の基礎を取り扱うので、得意な方はスルーして頂ければと思います。

物質量計算で躓いて化学が苦手になっていく方は多いのではないでしょうか?

実際、私の身近な人達を見ても、物質量計算で躓いて化学が苦手になった方が多いです。

モル計算難しいし、このままだと化学が大苦手になっちゃうよ~

焦らなくてもいいにゃ

モル計算を簡単に解くためのとっておきの方法を教えるにゃ

本当にそんな方法あるの?

それを聞いてもモル計算を解ける気がしないよ

モル計算は単位を操れば簡単に解けるにゃ

単位を操る?

そんなこと言われても意味が分からないよ

これから『単位の操り方』を詳しく説明するにゃ!

上の会話にも出てきましたが、物質量計算を超簡単に解くコツは、

単位を操ることです!!

これだけ聞いても何を言いたいのか分からないと思うので、単位を操るとはどういうことなのかを、例題を交えながら説明していきます。

物質量って何?

計算のコツを説明する前に、物質量について軽く説明します。

ただし、この部分は計算問題を解く上で全然必要ない知識なので、読み飛ばして頂いて結構です。

物質量の単位はモル(mol)と呼ばれていますが、モルカーとは全く関係ありませんw

物質量は、物質を構成する要素粒子の個数をアボガドロ定数(6.02×1023)で割ったものとして定義されています。(Wikipedia-物質量より)

言い換えると、物質の構成粒子(原子・分子・イオンなど)を(6.02×1023)個集めた集団は1molと表現されます。

これらを聞いてもイメージできない方が多いのではないかと思います。

むしろ、物質量の定義を理解しようとしても理解できず、諦めてしまう方が多い気がします…

ところが、上で述べたように、物質量の計算では、物質量の定義を理解する必要は全くありません

単位を操るとは?

ここから本題に入ります。

物質量の計算問題には、モル質量やモル濃度などの様々な値が出てきます。

それらの値には全て単位があります

ざっと次のような感じです。

  • モル質量 [g/mol]
  • モル体積 [L/mol]
  • モル濃度 [mol/L]
  • 密度 [g/cm3]

ちなみに、モル質量は原子量・分子量・式量と同じ値になります。

ここでいう『単位を操る』とは単位を分数とみなして約分することです。

言葉で書かれてもイメージが湧かないと思うので、例題を交えながら解説していきます。

※この記事は物質量計算の解法のみに主眼を置いているため、有効数字は考えないようにします。

一つ断っておきますが、必ず一度は例題の解答を写経するようにして下さい

持論ですが、計算問題というのは眺めているだけでは解けるようになりませんので。

モル質量に関する問題

初めに、モル質量に関する問題の解法を教えます。

モル質量に関する問題の場合、[g/mol]の単位を持つ値がモル質量としてではなく原子量として与えられていることが多いです。

早速例題を見てみましょう。

例題1

0.5molの水の質量は何グラムになるか求めよ。ただし、水素の原子量は1、酸素の原子量は16とする。

この手の問題では、初めに対象物質の分子量(イオン等の場合は式量)を求めましょう。

水の分子式はH2Oなので、分子量は次のように求めます。

2 × (水素の原子量) + 1 × (酸素の原子量)

= 2 × 1 + 1 × 16

= 2 + 16

= 18

H2Oの分子量は18と求まりました。

これがH2Oのモル質量に相当します。

続いて、単位を操る作業をします。

モル質量の単位は[g/mol]ですが、これを分数と考えてみましょう

$$\frac{\rm{g}}{\rm{mol}}$$

となります。

これにmolをかけると、mol同士で約分されて、gが得られると考えます。

$$\frac{\rm{g}}{\bcancel{\rm{mol}}} \times \bcancel{\rm{mol}} = \rm{g}$$

今回の問題では0.5[mol]なので、これを先ほど求めた18[g/mol]にかけてみましょう。

$$18 [\rm{g}/\rm{mol}] \times 0.5 [\rm{mol}] = 9 [\rm{g}]$$

したがって、9[g]と求まりました。これがこの問題の答えです。

この問題でやったことは次の2つだけです。

  • H2Oのモル質量を求める
  • モル質量の単位を分数(\(\frac{\rm{g}}{\rm{mol}}\))とみなし、これに\(\rm{mol}\)をかけて\(\rm{g}\)を求める

2つ目の単位を分数とみなして約分することを、『単位を操る』と言っています

水だけでは単純すぎるので、今度は水酸化ナトリウム(NaOH)に関する問題を考えましょう。

例題2

3molの水酸化ナトリウムの質量は何グラムになるか求めよ。ただし、水素の原子量は1、酸素の原子量は16、ナトリウムの原子量は23とする。

NaOHは組成式で表される物質なので、分子量ではなく式量となります。

(計算する上ではどうでもいいことですが)

NaOHの式量は次のように求められます。

(ナトリウムの原子量) + (酸素の原子量) + (水素の原子量)

= 23 + 16 + 1 = 40

これがモル質量に相当するので、NaOHのモル質量は40[g/mol]ということになります。

続いて、これにmolをかけるとgが求まります。

$$40 [\rm{g}/\rm{mol}] \times 3 [\rm{mol}] = 120 [\rm{g}]$$

したがって、問題の答えは120[g]ということになります。

このように、物質量[mol]とモル質量[g/mol]から質量[g]を求める問題では、molとg/molをかけるだけで正解に辿り着けます!

少し趣向を変えて、質量[g]とモル質量[g/mol]から物質量[mol]を求める例題を考えてみましょう。

例題3

88gの二酸化炭素の物質量を求めよ。ただし、炭素の原子量は12、酸素の原子量は16とする。

初めに、二酸化炭素(CO2)の分子量を求めます。

(Cの原子量) + 2 × (Oの原子量)

= 12 + 2 × 16

= 12 + 32 = 44

つまり、CO2のモル質量は44[g/mol]であることが分かります。

続いて、質量[g]とモル質量[g/mol]から物質量[mol]を求めます。

この場合も、単位を分数であるとみなして問題を解きます。

ただし、gにg/molをかけてもmolは求まらないので、少し工夫します。

先ほどはかけ算でしたが、今回は割り算を行います。

$$\rm{g} \div \frac{\rm{g}}{\rm{mol}} = \bcancel{\rm{g}} \times \frac{\rm{mol}}{\bcancel{\rm{g}}} = \rm{mol}$$

つまり、質量[g]をモル質量[g/mol]で割ると、[g]同士で約分されて[mol]が求まることが分かります。

今回の例題の場合は、

$$88 [\rm{g}] \div 44 [\rm{g}/\rm{mol}] = 2 [\rm{mol}]$$

したがって、問題の答えは2[mol]ということになります。

このように、単位はかけ算のみでなく割り算で考えて約分することもできます。

  • 物質量[mol]とモル質量[g/mol]から質量[g]を求める問題では、molとg/molをかけるだけ
  • ただし、単位を割り算して約分することもできる

モル体積に関する問題

続いて、モル体積に関する問題の解法を教えます。

上で見てきたモル質量の単位はg/molでしたが、モル体積の単位はL/molとなります。

これは、標準状態であることを仮定して出題されることが多いです。

標準状態: 0℃, 1013hPaの状態

標準状態では、どの気体であってもモル体積は22.4[L/mol]となります。

早速例題を見てみましょう。

例題4

標準状態において、67.2Lの窒素の物質量を求めよ。ただし、標準状態下では1molの気体の体積は22.4Lであるとする。

モル体積の単位は[L/mol]なので、これに体積[L]をかけても物質量[mol]は求まりません。

なので、今回も割り算を考えます。

体積[L]をモル体積[L/mol]で割ると、単位は次のように約分されます。

$$\rm{L} \div \frac{\rm{L}}{\rm{mol}} = \bcancel{\rm{L}} \times \frac{\rm{mol}}{\bcancel{\rm{L}}} = \rm{mol}$$

あとは簡単です。

窒素の体積67.2[L]をモル体積22.4[L/mol]で割ればいいだけです。

$$67.2 [\rm{L}] \div 22.4 [\rm{L}/\rm{mol}] = 3 [\rm{mol}]$$

したがって、問題の答えは3[mol]ということになります。

続いて、質量を求める場合を考えましょう。

例題5

標準状態において、44.8Lの酸素の質量は何グラムになるか求めよ。ただし、酸素の原子量は16とし、標準状態下では1molの気体の体積は22.4Lであるとする。

初めに、酸素(O2)の分子量を求めます。

2 × (Oの原子量) = 32

つまり、O2のモル質量は32[g/mol]であることが分かります。

例題1,2では、これに物質量[mol]をかければおしまいだったのですが、今回はmolを自分で求める必要があります。

例題4と同様に考えて、

$$44.8 [\rm{L}] \div 22.4 [\rm{L}/\rm{mol}] = 2 [\rm{mol}]$$

物質量が2[mol]と求まったので、これにモル質量32[g/mol]をかけて質量を求めます。

$$32 [\rm{g}/\rm{mol}] \times 2 [\rm{mol}] = 64 [\rm{g}]$$

したがって、問題の答えは64[g]ということになります。

このように、物質量[mol]が与えられていない場合でも、自身で物質量を計算すれば正解に辿り着くことができます。

  • 標準状態では、どの気体でもモル体積は22.4[L/mol]
  • モル質量と同様、単位のかけ算・割り算で考えればOK
  • 例題5のように物質量が与えられていない時は、自分で物質量を求めよう!

モル濃度に関する問題

最後に、モル濃度に関する問題の解法を教えます。

モル濃度の単位はmol/Lとなります。

注意すべきことは、単位自体は先ほどのモル体積[L/mol]の単位を逆数にしただけですが、値は\(\frac{1}{22.4}\)とはなりません。

まずは簡単な例題から見ていきましょう。

例題6

3Lの水の物質量を求めよ。ただし、モル濃度は1.5[mol/L]とする。

今回も例によって、単位を分数とみなして考えていきます。

モル濃度[mol/L]に体積[L]をかけると、[L]同士が約分されて物質量[mol]が求まります。

この問題の場合は、次のようになります。

$$1.5 [\rm{mol}/\rm{L}] \times 3 [\rm{L}] = 4.5 [\rm{mol}]$$

したがって、問題の答えは4.5[mol]ということになります。

続いて、モル体積の時と同様に、質量を求める問題を考えましょう。

例題7

2.5Lの塩酸の質量は何グラムになるか求めよ。ただし、水素の原子量は1、塩素の原子量は35.5とし、溶液のモル濃度は2[mol/L]とする。

初めに、塩酸(HCl)の分子量を求めます。

(Hの原子量) + (Clの原子量) = 1 + 35.5 = 36.5

つまり、HClのモル質量は36.5[g/mol]であることが分かります。

これに物質量[mol]をかければ質量が求まりますが…

例題5の時と同様、この問題でも物質量[mol]が初めから与えられていないので、自分でmolを計算する必要があります。

例題6と同様に考えて、

$$2 [\rm{mol}/\rm{L}] \times 2.5 [\rm{L}] = 5 [\rm{mol}]$$

物質量が5[mol]と求まったので、これにモル質量36.5[g/mol]をかけて質量を求めます。

$$36.5 [\rm{g}/\rm{mol}] \times 5 [\rm{mol}] = 182.5 [\rm{g}]$$

したがって、問題の答えは182.5[g]ということになります。

  • モル質量・モル体積と同様、単位のかけ算・割り算で考えればOK
  • 例題7のように物質量が与えられていない時は、自分で物質量を求めよう!

ここまでくれば、単位を操る事にも慣れてきたのではないでしょうか?

例題1~7の解法がちゃんと理解できていれば、物質量計算の基礎問題はほぼカンペキに解けると思います。

最後に、少し難しめの問題に挑戦してみましょう。

例題8

質量パーセント濃度が31.5%の硝酸のモル濃度を求めよ。ただし、水素の原子量は1、窒素の原子量は14、酸素の原子量は16とし、この硝酸の密度は1.5[g/cm3]とする。

先ほどまでの問題と比べると、大分難易度が高いかと思います。

難しい…

全然分からないよ~

それは与えられた条件が多い上に、%やcm3といったこれまで出てこなかった単位が登場したためです。

このような時は、焦らずに求められそうな値から求めていきましょう。

例によって、最初は硝酸(HNO3)のモル質量を求めます。

(Hの原子量) + (Nの原子量) + 3 × (Oの原子量)

= 1 + 14 + 3 × 16

= 1 + 14 + 48 = 63

HNO3のモル質量は63[g/mol]と求まりました。

最終的に欲しい単位はmolとLであり、今のところ[g/mol]の値が分かっているので、続いて[g]を求めます。

密度の単位が[g/cm3]なので、密度を用いて質量[g]を求めていきます。

cm3は体積に相当するため、体積さえ分かれば質量[g]が求まりますが、この問題では体積が与えられていません。

今回は、体積が1[L]であると仮定して計算してみましょう。

今回のように、モル質量[g/mol]と密度[g/cm3]が分かっている状態でモル濃度[mol/L]を求める際には、体積を1[L]だと仮定すると便利なので覚えておきましょう。

1[cm3] = 1[mL]なので、1[L]を[cm3]単位に直すと次のようになります。

$$1 [\rm{L}] = 1000 [\rm{mL}] = 1000 [\rm{cm^3}]$$

密度[g/cm3]に[cm3]をかけると[cm3]が約分されて、溶液の質量は次のように求まります。

$$1.5 [\rm{g}/\rm{cm^3}] \times 1000 [\rm{cm^3}] = 1500 [\rm{g}]$$

体積が1[L]だと仮定したおかげで、密度を1000倍すればいいだけなので楽ですね。

これをモル質量[g/mol]で割れば物質量[mol]が求まります。

質量パーセント濃度の存在を忘れていないでしょうか?

この問題では、たった今求めた質量に質量パーセント濃度をかける必要があります。

$$1500 [\rm{g}] \times \frac{31.5\%}{100} = 472.5 [\rm{g}]$$

硝酸の質量は472.5[g]と求まりました。

質量パーセント濃度をかけ忘れると、せっかく正解間近まで来たのに不正解ということになってしまうので気をつけましょう。

続いて、最初に求めたモル質量[g/mol]と質量[g]から物質量[mol]を求めます。

この場合は、質量[g]をモル質量[g/mol]で割ればOKです。(例題3参照)

$$472.5 [\rm{g}] \div 63 [\rm{g}/\rm{mol}] = 7.5 [\rm{mol}]$$

物質量は7.5[mol]と求まりました。

これを体積[L]で割ればモル濃度が求まります。

この問題では、体積が1[L]であると仮定したので、物質量の値がそのままモル濃度[mol/L]になります。

したがって、問題の答えは7.5[mol/L]ということになります。

体積を1[L]と仮定したことが

  • 密度から溶液の質量を求める時
  • 物質量からモル濃度を求める時

の2ヵ所で効いてきました。

この問題が解ければ、基礎問題だけでなく、標準~やや難くらいの問題に対応できるかと思います。

  • モル質量[g/mol]と密度[g/cm3]からモル濃度[mol/L]を求める問題では、体積を1[L]と仮定しよう!
  • 質量パーセント濃度が与えられた時は、かけるのを忘れないようにしましょう

まとめ

最後にまとめです。

この記事で最も伝えたいことは、

物質量計算では、単位のかけ算・割り算で考えて約分するようにしましょう!

ということです。

そうすれば物質量計算の問題を超簡単に解くことができます。

他にも、

  • 標準状態では、どの気体でもモル体積は22.4[L/mol]
  • モル質量[g/mol]と密度[g/cm3]からモル濃度[mol/L]を求める問題では、体積を1[L]と仮定しよう!

のようなポイントもありますが、基本は上述の単位を操る操作ができればOKです。

例題の解答ですが、解説文が数多く入っており読みにくいかと思いますので、模範解答だけ記載されたものを見たい方は、こちらをクリックして下さい。

プロフィール

さとぱん博士

29歳の博士研究員(ポスドク)
学部生時代に留年したが、大学院入試では筆記試験が免除され、修士課程修了時には奨学金の返還が半額免除された
加えて学振DC2に採用され、博士課程の途中まで借りていた奨学金の返還が全額免除された
学位取得と同時に学振PDに資格変更し、ポスドクとして研究に従事している
塾講師として2年連続で高校受験生全員を第一志望合格に導いたこともある
趣味: カラオケ、アニメ、マンガ、マギアレコード、etc...
※学振研究員が副収入を得るためには受入研究者の許可が必要ですが、AdSense広告では累計収益が8000円になるまで報酬が支払われないため、支払い開始までは広告を貼らせて頂きます。
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