【学振】論文が最重要だと考える理由

大学院

さとぱん博士です。普段は博士研究員(ポスドク)として研究に明け暮れています。

学振研究員に採用される上で、論文がとても重要だとよく言われています。

しかし、その一方で「論文を書いたことがなくても採用内定を頂いた!」という記事もネット上でよく見かけます。

最近は学振側が『論文数よりも申請者本人の研究者としての資質を重視する』という方針で審査すると言い始めましたが…

それでも私は「学振は論文が全て!」とまでは言いませんが、やはり論文が最重要なのかなと思っています

今年も、学振の選考結果が公表される時期がやってきました。

私も学振DC2(2回目)に申請していたので、選考結果に関するメールが送られてきました。

経験した人なら分かると思いますが、あのメールかなり心臓に悪いですよね(笑)

これまでの申請でかすりもしなかったので、今回も駄目だと諦めていましたが、なんと…

採用内定を頂きました!!

今までの申請では論文ゼロでしたが、今回は1報通してから申請したので、それが効いたのかなと思います。

今回の採用内定を受けて、

砂糖博士
砂糖博士

やっぱり学振では論文が大事だにゃ!

と心の底から思いました。

(DC1はともかくDC2は論文ゼロだと絶望的なので、特にそう感じたのかもしれません)

以下、私が学振で論文が最重要だと感じる理由を具体的に説明します。

学振って何?

初めに、そもそも学振が何なのかを説明します。

学振とは日本学術振興会の略であり、その機関が行っている研究助成制度の1つを学振研究員と呼んでいます。学振研究員の事を単に学振と呼ぶことも多いです。

学振は次のように定義されています。

文部科学省所管の独立行政法人日本学術振興会が、大学院博士課程在学者及び大学院博士課程修了者等で、優れた研究能力を有し、大学その他の研究機関で研究に専念することを希望する者を「特別研究員」に採用し、研究奨励金および研究費を支給する制度である。(Wikipedia-特別研究員より抜粋)

簡単に言うと給料を受給している博士課程学生や若手の博士研究員(通称ポスドク)のことです。(ポスドクは給料を頂いて当然ですが)

給与額は博士課程学生で200,000円/月、ポスドクで362,000円/月であり、いずれも課税対象となっています。

また、毎年150万円以内の範囲で研究費を申請することができます。

毎年募集をかけており、倍率は博士課程学生で約5倍、ポスドクで約5~8倍となっています(勿論年によりますが)

論文が最重要であるということはよく言われている

ネットを見ると『論文ゼロでも学振通った!』等の記事が数多くありますが、論文が最重要だと言っている方も結構います。

私が所属する研究室の先生方も、学振研究員になるには論文(と国際会議の口頭発表)が一番大事と仰っています

しかし、論文0報でも採用された実例も数多くあります。

私の身近な所では、研究室の先輩が論文0報(しかも学会発表4,5回程度)で第二次選考(当時は面接)免除でDC1から採用内定を頂きました。

他にもネットを見ると、論文0報でも採用されている方は少なからずいます。

確かに論文0報でも学振に採用される可能性はゼロではありませんが、それでも私は論文が最も重要だと思います。

IF付き論文を3報以上持っている方が、 以下のような感じの申請書を書いて採用内定を頂いたのを実際に目にしてきたので、なおさら論文が大事なのかなと思ってしまいます。

  • 文字と数式で埋め尽くされた申請書
  • 日本人なのに英文で書いた申請書

いずれも内容は素晴らしかったですが、読みやすくはなかったです…

論文が最重要だと考える客観的な理由

続いて、学振で採用される上で論文が最重要だと考える理由を客観的に説明します。

結論を先に述べてしまうと、専門分野以外の申請書を読んでも内容が分からず、結局は業績で判断してしまうからです。

学振では、申請した書面審査区分における6名の専門家が申請書を審査します。

区分分けされているとはいえ、かなり幅広い分野の専門家が申請書を審査します

当然、自身の専門とは大きく異なる分野を専門とする方も審査することになります。

例えば化学であれば、以下の2つの区分に分かれて審査されます。

  • 物理化学、機能物性化学、無機・錯体化学、分析化学、無機材料化学、エネルギー関連化学およびその関連分野
  • 有機化学、高分子、有機材料、生体分子化学およびその関連分野

化学の勉強をしたことがある方は分かるかと思いますが…

審査区分の分野の範囲が異常なほど広いんです!!

特に上の区分に至っては、有機化学系以外のほぼ全分野に渡るといってもいいでしょう。

仮に分子物性が専門の方がこの区分に申請すると、自身の専門とは大きく異なる無機系の化学合成・分析化学・環境化学等の専門家が審査することになります。

(ちなみに私の専門は物理化学系ですが、別の区分に出しましたw)

化学に限らず、審査区分の分野の範囲はかなり広いです。

なぜ審査区分が広ければ論文が重要になってくるのか、ということですが…

それは、

専門以外の分野の申請書を読んでも内容がイマイチ分からず、結局は研究業績で判断してしまう事が多いから

と私は考えています。

結局、論文数が最も客観的かつ公平に研究者の資質を計る判断材料になってきます。

仮に私が審査員だとしても、論文数が多かったり、高IFの論文を持っている方を高く評価してしまうと思います。

審査員的にも、論文数で機械的に評価するのが楽なんだと思います。

もしかすると上から怒られるかもしれませんが(笑)

実際、論文0報の方が、 6人の審査員全員に素晴らしいと思ってもらうのは至難の業です。

審査員は大量の申請書を猛スピードで読む(というより処理する?)ので、そもそも読んでもらえるとも限りません。

中には、真っ先に業績欄を見て、劣っていると感じたら即没!という審査員もいないとも限りません

逆に、研究業績が優れていれば優秀な人という印象を植え付けることができるかもしれません。

現在の学振の審査項目は

  • 研究計画の着想およびオリジナリティ
  • 申請書から推量される研究者としての資質

ですが、後者については論文数が多いほど優秀な研究者であると考えることができます。

前者についても、論文数が多い(研究遂行能力が優れている)研究者の方が計画を遂行できると判断する審査員がいるかもしれません。

以前は上記に加えて『研究業績(研究遂行能力)』という審査項目があったので、論文数が多いほど断然有利でしたが、項目が変わった現在でも論文数が多いほど評価が高くなると考えられます。

そのため、審査項目の観点から考えても論文数が多いほど有利になると言えます。

ただし、審査区分によって論文の重要度は違ってきます。

(それでも論文がある方が高評価なのは間違いないですが)

論文を出しやすい分野と出しにくい分野によって、その立ち位置は違ってきます。

例として自然科学系分野と人文系分野を比較すると、恐らく前者の方が論文を出しやすいと思います。

論文を出しやすい区分に申請する場合は、ライバルも論文を持っている方が多いので、論文がないと絶望的かもしれません。

一方、出しにくい分野だと、論文ゼロでも絶望的ではないかもしれません。

逆に、論文を持っているとかなり高評価され、ライバルに差をつけられると思います。

論文以外にも重要な業績もある

これまで論文ばかり言及してきましたが、論文以外にも評価される業績もあります。

ざっと思いついたものを挙げると、以下の通りです。

  • 学会発表
  • 学会発表の講演賞
  • 給付型奨学金の奨学生採用
  • 日本学生支援機構(JASSO)第一種奨学金の返還免除
  • 学内外の競争的資金獲得
  • 大学院入試における筆記試験免除

特に国際会議の口頭発表は、論文ほどではないもののかなり高評価されます。

仮に論文を持っていても、学会発表が0件だったりすると、印象が悪くなる可能性があります。

なので、学会発表も疎かになりすぎないよう気をつけましょう。

今回DC2に採用された私の業績は?

ここで、実際に学振DC2に採用された私の業績を見ていきます。

学振DC2の採用内定を頂いた人の1つのサンプルとして、少しでも参考にして頂けると幸いです。

申請時点での私の研究業績は以下の通りでした。

  • 査読付き論文: 1報
  • 国際会議での発表: 3件 (うち口頭発表1件)
  • 申し込みが受理された国際会議の口頭発表: 1件
  • 国内学会での発表: 10件 (うち口頭発表7件)
  • JASSO半額返還免除
  • 給付型奨学金の奨学生採用: 2件
  • 学内競争的資金獲得: 1件
  • 大学院入試筆記試験免除

※非登壇者としての発表はあまり評価されないため、除外しています。

自分で言うのもアレですが、学会発表頑張ってきたんだな~と思います(笑)

ちなみに、論文誌のインパクトファクター(IF)は4.5~5.0くらいです。

申請した審査区分の分野においては、かなり有名で権威ある雑誌です。

なので、 今回採用内定を頂く上で、論文を出せたのはかなり大きかったと思います。

ちなみに、論文がアクセプトされたのは学振申請書の学内〆切の数日前だったので、本当にギリギリでしたw

あと数日アクセプトが遅れるか、あるいは学内〆切が数日早かったら、不採用だった可能性も全然あったと思います。

ちなみに、DC1とDC2(1回目)の結果とざっくりした業績は以下の通りでした。

DC1は以下のような業績で申請して、不採用C(総合評価2.33)という結果でした。

  • 国際会議でのポスター発表: 1件
  • 国内学会での発表: 5件 (うち口頭発表4件)
  • 大学院入試筆記試験免除

DC1は一番必死に申請書作成に取り組みましたが、不採用Cという結果に終わってしまいました。

結果開示の時には泣きそうになり、マイナビに登録しました(笑)

DC2(1回目)は次のような業績で、不採用B(総合評価3.00)という結果でした。

  • 国際会議でのポスター発表: 2件
  • 国内学会での発表: 7件 (うち口頭発表5件)
  • JASSO返還免除学内推薦者(この時点では全免か半免か不明)
  • 給付型奨学金の奨学生採用: 1件
  • 大学院入試筆記試験免除

DC1で不採用Cだったので、論文ゼロで申請したDC2も当然不採用Cだと思っていたのに、何故か不採用Bだったので少し驚きました。

DC1とは異なる審査区分に申請したので、それが効いたのかもしれません。

ちなみに申請書作成に充てた時間は『DC1 >> DC2(1回目) > DC2(2回目)』という感じなのに、結果は『DC2(2回目) >> DC2(1回目) > DC1』という感じでした。

それが尚更「学振申請において論文は最重要である」という考えに拍車をかけたのかもしれません。

まとめ

最後に、この記事の要点を纏めます。

学振で採用内定を頂くためには、論文が最重要だと考える理由を述べてきました。

論文が最重要だと考える一番の理由は、概ね以下の通りです。

  • 審査員は自身の専門外の内容を審査する必要がある
  • 内容を読んでも完全に理解できる訳ではないから、業績で評価するのが一番手っ取り早い

業績の中で最も重視されるのは論文なので、学振の審査員から高評価されるには論文を出すのが最も有効です。

私自身、論文を1報通した途端に採用内定を頂いたので、論文が最も重要だということを実感しました。

ただし、論文以外にも学会発表会数等も重視されるので、論文だけに拘らずに業績を積むことが大事だと思います。

また、論文ゼロでも通る可能性はゼロではないので、論文が無いからといって諦めずに申請書を書きましょう

論文を持っていても100%通る訳でもないので、論文持っているのに落ちた場合も落ち込まない方が良いかと思います。

この記事を読んだ方が、一人でも多く学振から採用内定を頂けるよう祈っています!

プロフィール

さとぱん博士

29歳の博士研究員(ポスドク)
学部生時代に留年したが、大学院入試では筆記試験が免除され、修士課程修了時には奨学金の返還が半額免除された
加えて学振DC2に採用され、博士課程の途中まで借りていた奨学金の返還が全額免除された
学位取得と同時に学振PDに資格変更し、ポスドクとして研究に従事している
塾講師として2年連続で高校受験生全員を第一志望合格に導いたこともある
趣味: カラオケ、アニメ、マンガ、マギアレコード、etc...
※学振研究員が副収入を得るためには受入研究者の許可が必要ですが、AdSense広告では累計収益が8000円になるまで報酬が支払われないため、支払い開始までは広告を貼らせて頂きます。
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