さとぱん博士です。普段は博士研究員(ポスドク)として研究に明け暮れています。
今回は、実際に修論こと修士論文を英語で書いたことのある私が、修論を英語で書くメリットとデメリットをお伝えします。
大学院に進学すると、修士号を取得するために全員修論を書くことになります。
日本の大学院であれば普通は日本語で書きますが、言語に指定が無い場合は稀に英語で書く人もいます。
- 日本学生支援機構の奨学金の貸与を受けていて返還免除を狙っている方
- 博士課程進学予定で学振に申請する方
の中には、

修論を英語で書くと、奨学金返還免除や学振が有利になるの?
と思っている方もいるかもしれません。
結論を先に言ってしまうと、修論を英語で書いても奨学金返還免除や学振があまり有利にはなりません。
しかし、奨学金返還免除や学振が有利になる訳ではないことを差し引いても、修論を英語で書くメリットもあります。
この記事では、私が考える修論を英語で書くメリットとデメリットを詳細に説明していきます。
修論を英語で書くメリット
私が考える修論を英語で書くメリットは、次のような感じです。
- 英文誌への掲載論文があると楽
- 海外の大学院の博士課程に進学する場合は有効
- 副査の先生のコメントが少なくて済むかもしれない
- 単純にカッコいい
上から順番に説明していきます。
英文誌への掲載論文があると楽
英文誌への掲載論文やそのための下書きがあると、日本語より英語で修論を書く方が楽です。
私も修論を書き始めた時点で、英文誌に投稿するための論文の下書きがありましたが、修論を英語で書くのが本当に楽でした。
ただ、私の場合は一度投稿したことのあるものなので、下書きといってもほぼ完成状態でした。
ちなみにPNASという雑誌に投稿して元旦の朝(日本時間)にリジェクトされましたw
多少は内容を書き換えたものの、学術論文をコピペして体裁を整えるだけで修論が完成しました!
あとは主査(指導教員)に確認をお願いして、コメントを反映するのみでした。
修論発表会のプレゼン準備と並行しながらでも、2週間かからずに修論が完成したと記憶しています。
修論を一から書く場合は、執筆ペースが人一倍速くない限り、日本語でも1ヵ月以上かかります。
また、英文誌への掲載論文がある場合でも、日本語に翻訳するとそれだけで1,2週間かかります。
普通に考えて、コピペして体裁を整えて翻訳することを考えると、英語のまま書いた方が早く完成すると思います。
なので、英文誌への掲載論文やその下書きがある場合は、英語のまま修論を仕上げるのが最短ルートだと思います。
海外の大学院の博士課程に進学する場合は有効

これについては、有効というよりも英語で書いた修論が無いとマズいです。
海外の大学院の博士課程に進学する場合は、英語で執筆した修論の提出を求められる場合があります。
修論を日本語で執筆・提出し、受験する際に英語に訳して提出しても良いですが、手間がかかります。
それなら最初から英語で書いてしまった方が楽だと思います。
副査の先生のコメントが少なくて済むかもしれない
修論は、主査以外に副査という方によって審査されます。
私が所属する専攻では、教授・准教授の中から主査が1名、副査が2名選ばれることになっています。
なお、主査は指導教員、副査は所属研究室における主査以外の教員もしくは他研究室の教員から選ばれます。
主査の先生は学生の研究内容を把握しているので、英語で書かれた修論を渡されても苦ではないですが、副査の先生が英語の修論を渡されたら、読むだけでも一苦労です。
ましてや内容を理解して的確なコメントをするのはもっと大変です。
仮に私が修論の副査をすることになり英語で書かれた修論を渡されたら、恐らく流し読みで済ませてコメントは返さないかもしれませんw
(よほど気になる点があればコメントしますが)
なので、英語で修論を書くと、副査の先生からはコメントが少なくて済む可能性があります。
下手するとコメントが1つも来ない可能性もあります。
実際に私が修論を提出した際にも、副査の先生からは全くコメントが来ませんでした。
1つ目の理由とも関連しますが、修論を英語で書く学生は既に英文誌への論文の掲載経験があったり、ほぼ完成した論文の下書きがある方が多いです。
一般にこれらの修論は、一から書いたものに比べてクオリティが高いです。
なので、そもそも副査がコメントする必要がないという場合もあります。
単純にカッコいい

最後は小学生みたいな理由ですが、修論を英語で書くとカッコいいです。
修士論文発表会のプログラムを見ても『○○○○(英文)』と書いてあるとカッコいいです。
また、修士課程の成績証明書には修論タイトルが書かれますが、そこにも『○○○○(英文)』と記載されるのでカッコいいです。
修論を英語で書くデメリット
逆にデメリットは次のようになります。
- 英文誌への掲載論文が無いと超大変
- 引継ぎ資料として使い物にならない
- 奨学金返還免除や学振が有利になるわけではない
メリットと同様、上から順に説明していきます。
英文誌への掲載論文が無いと超大変
1つ目のメリットと真逆のケースです。
既に完成状態に近い英文がない状態で、一から英語で修論を書くのは超々大変です。
人によりますが、一般に修論はA4サイズで50~100ページほど書きます。
日本語で執筆しても1ヵ月ほどかかるので、それを英語で書くとなると数ヵ月かかります。下手すると半年でも書き終わらないかもしれません。
英作文が苦手な方は指導教員の助けが無ければ永遠に書き終わらないと思います。
ただ、留学生や帰国子女で日本語より英語の方が書きやすいという方は、英文誌への掲載論文が無い場合でも英語で書く方が良いかもしれません。
引継ぎ資料として使い物にならない
私もこの問題に直面しました。
研究室に新たに配属された学生が研究内容を理解するための引継ぎ資料として、修論が使われることは多々あります。
昨年、私は4年生の卒研指導を任されました。
研究室に配属されて間もない時期は、通常は私の修論を読んでもらい、研究内容を勉強してもらうところです。
しかし、英語で書かれた私の修論は引継ぎ資料として使い物になりませんでした…
代わりに大分前に修了した大先輩の修論をお借りして、引継ぎ資料として使わせて頂きました。
後輩の立場からしても、研究室に配属されて間もない時に先輩から

これ読んで研究内容理解しろよ
と言われて、英語で書かれた分厚い修論を渡されたら嫌ですよね。
私だったら研究室に行かなくなるかもしれませんw
引継ぎ資料としての役目を重視するなら、日本語で書くのが無難かと思います。
また、修論を書く時に研究室の先輩が書いた修論を参考にすることが多いですが、英語で書かれていると修論の手本としても使い物になりません。
奨学金返還免除や学振が有利になるわけではない
この記事を読んでくださっている方にとって、恐らく一番気になる事ではないでしょうか?
ぶっちゃけ、修論を英語で書いても奨学金返還免除や学振が有利にはなりません。
ほんの少し有利になるかもしれませんが、ボーダーライン上で迷った場合に考慮するかどうか程度だと思います。
前半で述べたメリットを享受できないのであれば、高評価狙いで無理に英語で書く必要はないと思います。
私も修論を書き始める前に、指導教員に

英語で修論書くと奨学金返還免除や学振は有利になりますかにゃ?
と質問したことがあるのですが、

大して有利にならないかな
投稿論文や国際会議の口頭発表の方が大事だよ
と言われました。

英語の投稿論文やその下書きのコピペで済ませたと思われて、評価が下がる可能性もあるよ
とも言われました。
私より遥かに研究歴が長い指導教員(学振審査の経験者かも?)もこのように仰っているので、奨学金返還免除や学振が有利にならないという情報は信憑性があるかと思います。
まとめ
最後に、この記事の要点を纏めさせて頂きます。
私が考える修論を英語で書くメリットは以下の通りでした。
- 英文誌への掲載論文があると楽
- 海外の大学院の博士課程に進学する場合は有効
- 副査の先生のコメントが少なくて済むかもしれない
- 単純にカッコいい
一方、デメリットは以下の通りでした。
- 英文誌への掲載論文が無いと超大変
- 引継ぎ資料として使い物にならない
- 奨学金返還免除や学振が有利になるわけではない
既に英文誌に掲載済みの学術論文や下書きがあれば英語で書いても良いと思いますが、そうでなければあまりメリットがありません。
ただ、留学生や帰国子女などで日本語より英語で書く方が楽という場合は、英語で書くのも全然アリだと思います。
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